乾癬の治療法| 乾癬治療【明日の乾癬 by UCBCares】
乾癬治療
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監修:今福 信一 先生
福岡大学医学部 皮膚科学教室 教授
乾癬の治療法は主に、外用療法・内服療法・光線療法・注射療法があり、
患者さんの状態に合わせて計画されます。
ここでは専門医監修のもと、乾癬の治療に用いられる薬をはじめ、各治療法をわかりやすく解説します。
乾癬の治療法は大きく二つに分けられます。一つは、皮膚症状が現れている部分に対して行う「局所療法」、
そしてもう一つは、乾癬という病気の大元である、体の中の炎症を鎮めるための「全身療法」です。
局所療法としては、外用療法(塗り薬)と光線療法(局所照射)があり、全身療法としては、内服療法(飲み薬)と
光線療法(局所照射以外)、注射療法(生物学的製剤)が該当します。
ステロイド薬
ステロイドは炎症を抑える薬です。発病や病状の悪化に炎症がかかわっている多くの病気の治療に、ステロイド薬が使われていて、内服薬(飲み薬)、外用薬(塗り薬)、吸入薬、点眼薬、注射薬など、さまざまなタイプがあります。乾癬の治療では、皮膚の症状に対してステロイド外用薬が用いられます。
活性型ビタミンD3
乾癬の皮膚症状は、炎症のために皮膚の組織が過剰な新陳代謝を繰り返しているために起こります。これに対してビタミンD3の外用薬は、皮膚の新陳代謝を整えて皮膚細胞が過剰につくられるのを抑制し、正常な皮膚の再成を促すように働きます。
配合外用薬
前記のステロイド薬とビタミンD3の両方の成分を混ぜ合わせた配合薬もあり、両方の薬が必要な患者さんに処方されることがあります。
塗り方のポイント
患者さんの中には、「外用薬をよく擦り込んだほうが薬が皮膚の中に届く」と考えて、力を加えて塗る人がいますが、これはよくありません。皮膚を傷め、症状を悪化させてしまいかねないからです。スキンケアのための保湿剤も同じです。
薬の成分は皮膚の表面や毛穴から皮膚の内側に浸透していくので、皮膚の患部に指先や手のひらを使ってやさしく押し広げましょう。患部が広い場合は、複数箇所に薬を小分けにして乗せてください。力を加えたから皮膚の中に入っていくわけではありません。
PDE4阻害薬
炎症細胞の働きを抑えて皮膚の炎症を抑制し、乾癬の病変を正常に戻すように作用する薬です。この後に解説するレチノイドや免疫抑制薬よりも新しい薬で、腎臓や肝臓への副作用が少ないと言われています。
レチノイド製剤
レチノイドとは、ビタミンAとその誘導体(ビタミンAの構造の一部を変えたもの)のことです。このレチノイドには、皮膚の細胞の異常な増殖を抑える働きがあります。服用中と服用終了からしばらく(女性は2年、男性は6カ月)は避妊が必要です。
免疫抑制薬
乾癬は免疫システムの過剰による病気です。免疫抑制薬は、その過剰な免疫反応を抑えるように作用して、乾癬の病状を改善します。さまざまな免疫抑制薬がありますが、乾癬の治療にはシクロスポリンという薬がよく使われています。
紫外線には、皮膚の炎症や過剰な増殖を抑える作用があります。その作用を乾癬の皮膚症状の抑制に応用する治療法が光線療法です。症状の強い一部分の皮膚に対する局所治療としての照射のほかに、全身の広い範囲に症状が表れている場合には全身療法としての照射も実施されます。
なお、日焼けやひりつきなどの副作用があるため、照射する量や回数の調節が必要です。また、全身照射は免疫抑制薬の服用との併用はできません。日光に当たると乾癬の症状が悪化する患者さんなども、この治療法は適していません。
乾癬は、免疫システムの異常によって全身の炎症が強くなる病気です。炎症を引き起こす物質を「炎症性サイトカイン」といい、乾癬の患者さんの体内では炎症性サイトカインが過剰につくられています。
生物学的製剤または抗体医薬品とも呼ばれる注射薬は、その炎症性サイトカインを中和することでその働きを抑え、体の中から乾癬の病状をコントロールします。炎症性サイトカインはいくつか種類がありますが、乾癬ではTNFα、IL-17、IL-23などの関与が強く、それらの働きを抑制する作用をもつ注射薬が用いられています。
なお、皮膚科では生物学的製剤による治療は、使用が認められた施設のみで行われています。
血管に刺した針から血液をいったん体外へ取り出し、特殊な装置を用いて体に悪さをしている物質を取り除いてから、血液を体に戻す「血液浄化療法」という治療法があります。薬などによる治療と異なり臓器への負担が少ないとされ、「引き算の治療」とも呼ばれます。
乾癬に対する血液浄化療法としては、炎症を引き起こす成分(顆粒球と単球)を取り除く治療が行われます。生物学的製剤などによる積極的な乾癬治療を行いにくい場合、またはそれらの治療の効果が十分でない場合などに用いられています。現時点では、膿疱性乾癬と乾癬性関節炎の治療に保険が適用されます。
これらの治療法の中から、症状が表れている部位や範囲、患者さんの生活習慣や希望など、さまざまな条件を考慮して、それぞれの患者さんに適した治療法を選んでいくことになります。
よく知られている治療の進め方の指標として、「乾癬治療のピラミッド計画」と呼ばれるものがあります。皮膚症状に対する外用薬の使用をベースとして、症状に応じて内服薬や注射薬による全身療法を加えていくという考え方です。
乾癬治療のピラミッド計画
飯塚一:乾癬治療のピラミッド計画 2017. Visual Dermatol. 2017; 16: 850-851 より改変
乾癬の治療法は最近10年ほどの間に長足の進歩を遂げました。今では多くの患者さんの症状を十分コントロールできるようになっています。それとともに、以前よりも高い治療目標を設定できるようにもなりました。
しかし実際の治療は一人ひとりの患者さんによって異なり、最適な治療の考え方も人それぞれで、マニュアル通りにはいかないものです。主治医と相談しながら、まず実現したい具体的なゴールを決めて、そこに向かって治療法を選び、実践していきましょう。
最後に治療費について簡単にお話しします。
乾癬の治療には基本的に医療保険が適用されます。ただ、注射薬の生物学的製剤などの高額な医薬品もあるため、保険診療であっても治療費が高くなる場合があります。
ひと月あたりの自己負担額が一定金額(所得により異なる)を超えた場合、高額療養費制度の対象となり、上限を超えた分は申請により還付されます。そのほかにも、「付加給付制度」「高額介護合算療養費」「医療費控除」などが適用されるケースもあります。それらを活用しながら、必要な治療を続けていってください。
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