乾癬(かんせん)ってどんな病気?| 乾癬とは【明日の乾癬 by UCBCares】

乾癬とは

【医師監修】
乾癬とは?

Psoriasis

監修:今福 信一 先生

(福岡大学医学部 皮膚科学教室 教授)

乾癬とは、皮膚が赤く盛り上がって、白い鱗のようになる症状が現れる病気です。
ここでは専門医監修のもと、乾癬の種類やそれぞれの症状、乾癬に関する疑問などを解説します。

乾癬(かんせん)は
どのような病気?

乾癬は、免疫システムが過剰に反応することで起こる病気です。免疫システムとは、本来であれば
自分の体を守るための仕組みですが、ウイルスや細菌による感染症などにかかるのを、免疫システムが防いでくれています。
ところが、この免疫システムが過剰に反応することで、皮膚や関節に炎症反応が起こるのが乾癬です。
皮膚の組織に炎症が生じて新陳代謝が早まり、後に解説する特徴的な皮膚症状が表れます。

  • 患者数は約40万人
  • 男性患者は女性患者の約2倍
  • 思春期以降から50歳代

乾癬の患者さんは国内で約40万人、人口の0.2~0.3%ほどと推定されており、近年増加傾向にあります。
乾癬は幅広い年齢層で発症する病気ですが、好発年齢(発症しやすい年齢)は、思春期以降から50歳代と考えられています。また、日本では男性が多いという特徴があり、患者数の男女比は約2対1です。

主な症状

発疹の一種で皮膚が赤く盛り上がる「紅斑(こうはん)」や、銀白色のカサカサした「鱗屑(りんせつ)」といった症状がよく表れます。患者さんによっては、このような皮膚の症状に加えて、指や首、腰などの関節の痛みが現れることがあります。また、一部の患者さんでは、皮膚の症状よりも先に関節の症状が現れます。

福岡大学医学部 皮膚科学教室 
教授 今福 信一先生提供

皮膚症状の表れやすい部位

乾癬の皮膚症状が表れやすい部位は、頭、爪、ひじ、へそ、
お尻、太もも、ひざ、すねなどです。

乾癬の種類

乾癬は症状の表れ方などによって、医学的に次の5つのタイプに分けられています。

01

尋常性乾癬

じんじょうせいかんせん

乾癬の中で最も多いタイプで、国内では乾癬患者さんの約90%が尋常性乾癬であるとされています。 皮膚が赤くなって盛り上がり(紅斑・こうはん)、その表面に銀白色のフケのようなカサカサしたもの(鱗屑・りんせつ)がみられます。かゆみを伴うことがありますが、その程度には個人差があり、アトピー性皮膚炎ほどは強くないことが多いと言われています。ただし、中には強いかゆみが現れる患者さんもいます。
皮膚の症状は、頭皮や髪の生え際、ひじやひざなどの、外部からの刺激を受けやすい部位に多くみられる傾向がありますが、それら以外の部位に表れることもあります。病気の勢いが強いときには発疹の数が増え、それらが互いに融合して(くっつきあって)大きくなります。

02

乾癬性関節炎(関節症性乾癬)

乾癬性関節炎

(関節症性乾癬)

かんせんせいかんせつえん

多くの場合は皮膚症状が現れた後に関節症状が出現しますが、国内で新たに乾癬と診断された患者さんの約10%が乾癬性関節炎(関節症性乾癬)であったという報告もあります。つまり、乾癬患者さんの10人に1人は、関節症状が表れてから乾癬と診断されていると考えられます。また、乾癬患者さん全体の10~30%が乾癬性関節炎に該当するという報告もあります。皮膚症状よりも関節症状が先行する場合は、診断が難しく確定に時間がかかってしまうことがあります。
乾癬性関節炎は、皮膚症状に加え、関節の腫れや痛みを伴います。
痛みを生じる関節は患者さんによって異なりますが、手指の関節や足趾(足の指)のほか、ひざや踵、首や腰などによくみられます。また、乾癬性関節炎では、爪が剥がれたり点状に陥没するなど、爪症状がみられることもあります。
乾癬性関節炎の治療が十分でない状態が長く続くと、徐々に関節が変形してしまい、日常生活に支障が生じることがあるため、早期診断・早期治療開始が大切です。

03

滴状乾癬

てきじょうかんせん

小児・若年者に多いタイプの乾癬で、乾癬患者さん全体の約4%に当たると言われており、発症に溶連菌の乾癬が関係していることがあります。発疹出現の1~2週間前に、かぜや咽頭炎、扁桃炎などの感染症にかかっていて、そのあとに滴状乾癬を発症することがあります。
尋常性乾癬よりもサイズの小さい水滴のような発疹が全身にパラパラと出現することが特徴です。発疹が融合する傾向はありません。
自然に治る例が多いのですが、慢性の尋常性乾癬に移行することもあります。

04

乾癬性紅皮症

かんせんせいこうひしょう

乾癬の皮膚症状が広範囲に広がった状態を指します。乾癬患者さん全体の約1%が該当すると言われています。
全身の90%以上が真っ赤になり、続いて厚い鱗屑(りんせつ)が生じ、剥がれて「落屑(らくせつ)」になります。
発熱、倦怠感、むくみ(浮腫)が生じることもあり、入院による治療が必要となる場合もあります。
ひどい乾癬があるのに適切な治療を受けていなかったり、何らかの原因、例えば感染症などで尋常性乾癬が悪化して乾癬性紅皮症に移行してしまう例が多く見られます。

05

膿疱性乾癬

のうほうせいかんせん

急な発熱とともに全身の皮膚が赤みを帯びて、膿疱(白または黄色い膿をもつ小さな発疹)が多発します。全身のむくみや関節痛、倦怠感などがみられることもあります。乾癬患者さん全体の約1%程度が該当すると言われています。
発疹の現われ方によって、汎発型(発疹・膿疱が全身に広がっている状態)、限局型(発疹・膿疱が身体の一部にだけ出ている状態)の二つに大別されます。

汎発型

発疹・膿疱が全身に
広がっている状態

限局型

発疹・膿疱が身体の一部に
だけ出ている状態

汎発型の膿疱性乾癬は稀な病気ですが急速に重症化しやすく、入院治療が必要な場合があります。難治性であることや、治療に急を要することなどから、厚生労働省特定疾患治療研究事業の指定難病に指定されており、認定基準を満たせば医療費助成が受けられます(限局型は通常、全身症状は軽度で、一時的であるため特定疾患の対象外です)。

乾癬の原因

乾癬の原因は、冒頭で少しお話ししたように、免疫システムが過剰に反応することです。
では、なぜ免疫システムが過剰に反応してしまうのか? 実はその理由は解明されていません。
現時点では、遺伝的な背景を持っている人に、ストレスや体重増加、喫煙、感染症、薬剤(β遮断薬が多い)などの、何らかの負荷が加わった時に、免疫システムの異常が生じると考えられています。

免疫システムが過剰に反応することで、「炎症性サイトカイン」と呼ばれる物質が増加します。この炎症性サイトカインによって、乾癬では皮膚の炎症が強くなり、また皮膚以外にも関節や血管の炎症も強くなります。
近年では、乾癬は皮膚疾患であると同時に、全身の炎症反応が亢進する(炎症が強まる)病気として捉えられています。

乾癬に関するQ&A

Q.

乾癬は人にうつる?

A.

乾癬は、「かんせん」と読むものの、感染症ではないので、他人に感染することはありません。温泉などの共同浴場やプールに入ることは全く問題ありません。

Q.

乾癬になりやすい体質とは?

A.

さきほど解説したように、乾癬を引き起こす免疫システムの過剰反応の原因は明らかになっていないものの、遺伝的背景や体質が関係していると考えられています。そのような人に、何らかの負荷が加わって乾癬が発症しますが、乾癬という病気そのものが遺伝して引き継がれるわけではありません。
日本人での乾癬の家族内発症の頻度は4~5%ほどと報告されています。つまり、乾癬の患者さんの血縁者が乾癬を発症する確率は日本人では高くなく、発症しない確率の方が圧倒的に高いと言えます。なお、欧米は日本よりも乾癬患者数が多く、家族内発症も約20%と報告されています。

Q.

乾癬は完治できる?

A.

乾癬は、慢性の経過をたどり完治しにくい病気です。ただし、完治しないとは「治療できない」ということではありません。乾癬患者さんの大半は治療を続けることで、症状をコントロールすることが可能で、症状が気にならない状態を維持できます。
重要なことは、症状が軽快しても自己判断で治療を中断しないことです。症状が抑えられていても、乾癬の原因で炎症を起こしやすい体質は続いているので、治療を中断すると、再発してしまうことが少なくありません。
再発しても治療を再開すれば皮膚の症状は、再び改善していきます。しかし関節は、症状を放置して変形が進んでしまうと、後から治療を強化しても元に戻すことはできません。
乾癬に伴う関節の症状は、早期発見と治療の継続がとくに大切です。

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