「最善の乾癬治療」を受けるために患者さんに知っておいてほしいこと | 乾癬治療【明日の乾癬 by UCBCares】

専門医に聞く乾癬治療

「最善の乾癬治療」を受けるた
めに患者さんに知っておいてほ
しいこと

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東京慈恵会医科大学附属 柏病院
皮膚科 診療部長

遠藤幸紀
先生

乾癬の治療法には多くの選択肢がありますが、「自分の受けている治療法は本当にベストなのか」
「 別の治療法に変えたほうが良いのではないか」と悩む患者さんは少なくありません。患者さんにとって「最善の乾癬治療」とは何か、患者さんは治療についてどのように考えれば良いのか、東京慈恵会医科大学附属柏病院の皮膚科 診療部長である遠藤幸紀先生に伺いました。

治療に納得がいかない時は
思いを主治医に打ち明けましょう

乾癬の治療には、塗り薬や飲み薬、光線療法、注射など様々な方法があります。これほど多くの治療法があるのは、皮膚科の中でも乾癬がダントツでしょう。逆にいえば、それだけ攻略が難しい病気ということです。
最初に患者さんに治療方針を伝えた際、患者さんからよく聞かれるのが、「これで治りますか?」ということです。そんな時は「この病気は高血圧や糖尿病などと同じ慢性的な病気です。高血圧なら血圧、糖尿病なら血糖が正常範囲に収まるようコントロールしていくのと同様に、この病気では発疹や痒み、関節の痛みをコントロールしていくことが大切なんですよ」と説明するようにしています。
治療が始まっても、なかなか十分な治療効果が得られないこともあります。誰でも治療に対する疑問や不安を持つことでしょう。そのような時は、主治医にその気持ちを話してみてください。最初は勇気が必要かもしれません。伝えたい要点をあらかじめメモしておくと話しやすいと思います。実際に話してみると、きっと思っている以上に主治医は話を聞いてくれると思いまよ。

乾癬の治療法はこの10年で
大きな変化を遂げています

患者さんはどんな状況でも、もっと良くなりたいと思っていますし、医師はその患者さんの状態に応じて治療の選択肢を提供していきます。これは乾癬に限ったことではありませんが、医師と患者さんの関係において、私はお互いに“知ること”と“知らせること”を大事にしています。
どんな治療法があるのか、どんな薬剤があるのかなど、患者さんには乾癬に関する様々な情報を知る権利があり、治療法や薬剤に関する医療情報を適切に提供するのは医師としての義務です。たとえば、この10 年で生物学的製剤により、乾癬の治療は大きく変わりました。一方で、いまだに「乾癬の治療法は塗り薬しか知らない」という患者さんもおられるのが現実です。
生物学的製剤は日本では10 種類が承認されていますが、どの薬剤も一定の効果があります。また、膿疱性乾癬では炎症原因となる白血球を体外でろ過し取り除く「顆粒球単球吸着除去療法」という方法もあります。
これらの治療を受けて効果があったとしても、次は「いつまで続けなければならないのか」「中止するとまた発疹がひどくなるのではないか」という心配が出てきます。
私は外来で「今の治療の効果はどうですか」と患者さんに聞きながら治療法を検討しています。皮膚の症状がおさまって、塗り薬での治療の継続そのものが患者さんのストレスになり、患者さんが治療をやめたいと思った時は、一旦休むのも決して悪くはないと思います。そして、その後また症状が出てきた時に、治療を再開することも選択肢の1つだと思っています。乾癬の治療は長く続くので、ストレスとも上手に付き合っていくことが大切です。

乾癬の治療とは、自分に合ったルートで
富士山を登るようなものと考えましょう

乾癬の治療法は、大きくは「全身療法」と「局所療法」の2 つに分けられ、更に「外用療法(塗り薬)」、「光線療法」、「内服療法(飲み薬)」、「注射療法」の4 つがあります。
治療の進め方の指標としては、「乾癬治療のピラミッド計画」(図)がよく知られています。重症度に合った乾癬治療のあり方を示したものですが、実際には患者さんと治療方法の相性によって効果の出方が異なるため、マニュアル通りにはいきません。その時の患者さんに最も適している治療法を選択していく必要があります。
治療を続ける上で患者さんにぜひやっていただきたい大事なことは、ひとまず実現したい「具体的なゴール」を決めることです。「見えている部分の発疹が取れればいい」「全身の発疹を完全に取りたい」「痒みを取りたい」「関節の痛みを取りたい」などです。それによって、治療法は違ってきます。
いずれにしても、目的のゴールに向かって、その患者さんの状態に応じた「最適な治療」が「最善の治療」なのであり、「最新の治療」が最善なのではありません。繰り返しになりますが、乾癬には治療法の選択肢がたくさんあります。乾癬の治癒とは富士山の頂上を目指すようなもので、ふもとから歩いて登る方もいれば、5合目までバスで行き、そこから登り始める方もいらっしゃいます。頂上という「目指すゴール」へのルートは人それぞれ異なるということを理解して、主治医とよく話し合いながら治療を続けていただきたいと思います。

顆粒球単球吸着除去療法は「引き算の治療」

外用薬や内服薬、注射は薬剤を体内に入れる「足し算の治療」で、肝臓などに何らかの影響を及ぼす可能性があります。それに対して、唯一の「引き算の治療」で臓器への影響なく効果が期待されているのが、顆粒球単球吸着除去療法です。静脈に針を刺して血液を体外へ取り出し、特殊な装置を通して炎症の原因となる白血球(顆粒球と単球)を取り除きます。ただし膿疱性乾癬のみに保険適用が認められている治療法です。

「Rebrand Yourself vol.1」2022年5月掲載

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