患者さんの全体像が大切| 乾癬治療【明日の乾癬 by UCBCares】
専門医に聞く乾癬治療
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公益財団法人 日本生命済生会
日本生命病院 皮膚科 部長/乾癬センター長
医療従事者と患者さんの積極的な
コミュニケーションのために ①
医療従事者と患者さんの積極的なコミュニケーションのために ①
乾癬と上手に付き合っていくためには、治療だけでなく、患者さんご自身が、日々の生活の中で症状を悪化させない努力をすることも大切です。思うような治療効果が得られないときには、治療自体に問題があるのか、生活の中に症状を悪化させる原因があるのか、あるいはどちらにも問題があるのかを、一緒に考え、治療を見直します。
わたしは診察時に、患者さんとご自身の仕事や趣味などについての話をするのですが、そういった話をしていると、患者さんの仕事内容やライフスタイルなどが具体的にみえてきます。仕事で段ボールを扱う方であれば、段ボールが肌にあたって刺激になっていないか、デスクワークの方なら、座っているときに机で擦れていないか、和室のある家にお住まいであれば、正座など、膝を折って座ることが多くないかなど、日常生活の中に症状を悪化させる原因がないか、気づくきっかけになります。
生活習慣に問題がない場合は、薬の塗り方や服用・注射方法、あるいは薬そのものなど、治療が原因になっていないかを考えます。患者さんから「薬をしっかり塗れていない」「薬をきちんと飲めていない」「きちんと注射できていない」ということを医療従事者に伝えるのは、なかなか難しいと思います。普段の何気ない会話の中からヒントを探します。朝早く起きるために、夜早く寝てしまう方であれば、夜に薬を塗ることが難しいのではないかなど、治療自体に無理がないかについても一緒に考えていくことができます。
十分な治療効果が得られないときには、その原因を突き止めることによって、治療を変更するのか、あるいは治療はそのままで生活習慣を改めて見直すのかなど、次のステップに進むことができます。治療をつづけることが難しいのであれば、その原因を探り、解決する方法をわれわれ医療従事者と一緒に考えていけばよいのです。診療の中での何気ない会話の中にも、治療がうまくいかない原因のヒントが隠されているので、病気や治療のことにとどまらず、患者さんご自身についてもお話しいただけると、そのことが治療の助けになることがあるのです。
われわれ皮膚科医は患者さんの「乾癬」を診ていますが、乾癬は患者さんの一部であって、全部ではありません。病院を一歩出たら、その方は、一家を支えるお父さんかもしれません。家族の健康を支えるお母さんかもしれません。受験を控えている学生かもしれません。あるいは、お孫さんとの時間を楽しみにしているおじいちゃん、おばあちゃんかもしれません。「治療」と「生活習慣の改善」が両輪となって動いてはじめて、適切な治療効果を得ることができます。乾癬治療においては、一人ひとりの患者さんを理解・把握することがとても重要です。そのためには、われわれ医療従事者と患者さんご本人が積極的にコミュニケーションをとることがとても大切です。
ポイント
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