診察室の参観日 群馬大学医学部附属病院 皮膚科 | 乾癬治療 【明日の乾癬 by UCBCares】

診察室の参観日

大学病院として最新治療を実践し
地域の医療連携・患者さんとの
連携にも取り組む

群馬大学医学部附属病院 皮膚科群馬県前橋市

提供:群馬大学医学部附属病院

大学病院の皮膚科とは「クリニックや診療所で手に負えなくなったら紹介してもらうところ」というイメージであり、どのような治療や活動をしているのかはよくわからないという方も多いのではないだろうか。そこで、今回は群馬大学医学部附属病院皮膚科准教授の安田正人先生に、基幹病院である大学病院での乾癬外来の対応、更には新たな取り組みについて取材した。

最新の治療を施す施設から、地域医療連携の中心へ
変わりつつある大学病院の役割

群馬県前橋市にある群馬大学医学部附属病院皮膚科には、アトピー性皮膚炎や強皮症、皮膚筋炎など様々な専門外来があり、担当医師がそれぞれの疾患の患者さんに対して責任をもって診療することを特徴としている。専門外来の一つである乾癬・角化症外来には、現在、群馬県を中心に約330人の乾癬患者さんが通院し、3人の医師で診療にあたっている。患者さんのうち20%強は関節炎を併発しており、乾癬の患者さんは、全体として増加傾向にあるという。
大学病院における乾癬治療と診療所の乾癬治療では、何が違うのか。同院皮膚科の乾癬担当医師の1人、准教授の安田正人先生は、大学病院の役割として次の3つを挙げる。

  1. 1) 患者さんに最新の乾癬治療を提供する
  2. 2) 外用療法や紫外線療法を活用した短期集中の入院治療(2週間~1ヵ月程度)を行う
  3. 3) 生物学的製剤の維持療法を含め地域の診療所や病院と連携して診療を行う。また、診療所で生物学的製剤を導入する際も対応する(導入時のスクリーニング検査、導入後の定期的な検査、副作用出現時の緊急対応)

これまで乾癬に対する生物学的製剤による治療は日本皮膚科学会が認定した承認施設のみで行われていた。2018 年度より日本皮膚科学会が一定の条件を満たした診療所での生物学的製剤の導入を認める方針を打ち出し、また、承認施設で治療導入をした上で診療所等で維持治療を行うことも可能となっている。生物学的製剤使用承認を得た診療所も出てきており、今後は乾癬の治療において大学病院と診療所との違いが少なくなることが期待されるという。そのため、同院皮膚科では基幹病院としての役割を見直し、“ 3つの連携”の強化を進めている。

「地域の診療所」「患者会」との連携で患者さんが治療しやすい環境をつくる

連携の1つ目は、「地域の医療機関との連携」である。長期にわたり受診する必要がある乾癬患者さんの負担を軽減する目的で、2020年に地域の医療機関に対してアンケート調査を実施し、どのような連携が可能かを検討した。群馬県における生物学的製剤使用承認施設は10施設、さらに維持治療で連携できる医療機関は2022年1月現在で市中病院が3施設、診療所は16施設となっており、群馬県内にとどまらず埼玉県北部や栃木県西部にも広がっている(図)。

病診連携については、生物学的製剤の維持治療での連携以外にも、安田先生は「乾癬の病態や最新の治療について説明を聞くためだけでも、かかりつけ医から大学病院を紹介してもらうのもいいでしょう」と話す。通院患者さんが多い診療所では病気や治療についての説明にさける時間はどうしても短くなるが、患者さん自身が治療を積極的に行っていくためには病気への理解が不可欠と考えており、「説明を聞いた上で、紹介元の診療所で治療を継続される方もいますし、生物学的製剤など新規の治療を導入した上で、私たちの病院から再び診療所へ戻って継続していただくケースも出てきています」と説明する。今後は、群馬県全域の市中病院や診療所との連携を強化し、群馬県全体で乾癬の患者さんを診療していく体制を整えていきたいという。
連携の2 つ目は、「理学療法との連携」である。安田先生は、治療により炎症はおさまっているものの関節に痛みが残る乾癬性関節炎の患者さんに対し、その痛みを緩和することでQOL(生活の質)を向上できないかと考え、近隣の整形外科クリニックと連携し理学療法を取り入れた治療を始めている。「世界的にも乾癬性関節炎での理学療法の効果について解析しているデータは多くないことから、この連携で蓄積されていくデータを新たな治療法の確立に貢献できないかと考えています」。
3つ目は、「患者会との連携」である。群馬県には患者会「群馬乾癬友の会(からっ風の会)」があり、安田先生は、この会の発足に尽力した安部正敏先生(現札幌皮膚科クリニック院長)とともに相談医を務めている。患者会で学習会を開く際には、通院している患者さんにプログラムの内容を紹介する。「ただ、乾癬の患者さんは中高年の男性が多く、面識のない人たちのコミュニティに加わることに抵抗感があり、なかなか一歩が踏み出せずにいますね」。コロナ禍をきっかけに広まったオンラインの学習会であれば、通常の学習会よりも参加のハードルが低くなり、参加者が増えるのではと期待を寄せる。「今後も、“からっ風の会”との関係を深め、会員数増加に協力し、より多くの患者さんに乾癬治療について知っていただきたいと考えています」。

患者さんに正確な情報を伝えるとともに
患者さんの気持ちを正確に把握したい

安田先生は、乾癬治療において患者さんとの意思の疎通を心がけ、なかでも3つのポイントを重視しているという。 まず、患者さんとコミュニケーションをとりながら治療法を理解してもらい、その上で、一緒に相談しながら治療方針を決めていくこと。「患者さんの要望に合った治療法を提案するようにしています。そのためにも、患者さんが要望を打ち明けられる信頼関係を築くよう努めています」。
次に、乾癬の病態と治療を患者さんへ明確に伝えること。乾癬は、たとえば感染症のように治療で完治する病気ではなく、軽快することもあるものの、「多くの場合、治療は長期に及び、症状をコントロールしていく必要がある」ことを伝え、患者さんに理解してもらう。「今起こっている症状に対して、なぜこの治療法を行う必要があるかを示し、患者さんに治療への自覚をうながすことで、一緒に治療していきたいと考えています」。更に、患者さんが治療に満足しているかどうかを把握するように努めること。その理由として安田先生は、乾癬を含めた皮膚病が炎症の状態を患者さん自身で確認できる病気であることを挙げる。「患者さんは自分の目で良くなっているか、悪くなっているか毎日観察することができ、症状が改善すれば一緒に喜ぶことができます。それは、皮膚科医にとっても大きな喜びなのです」

市民公開講座などを通して、乾癬という疾患や
治療についての情報の拡大に努める

安田先生は乾癬について、「医師と患者さんが一緒に治療していく病気」と説く。2021年11月に、皮膚の日にちなんで開催したWeb市民公開講座では、『皮膚科の正しいかかり方』と題し、患者さんが心に留めておくべき大事なこととして下記の5つのポイントを挙げた。

① 自分の皮膚を観察しましょう
② 皮膚、そして、自分の病気を学びましょう
③ 医師に自分の苦しみ、望みをしっかりと伝えましょう
④ 治療は自分で行うものだと理解しましょう
⑤ 自分の意思決定にはバイアスがかかるものだと認識しましょう

近年、乾癬治療ではいろいろな治療法が登場し、治療の選択肢が増えて、症状をコントロールしやすくなってきている。患者さんによっては、皮疹がない状態にまで改善するようになった。安田先生は、患者さんに向けて「ぜひ皆さんから私たち医師にどんな治療をしてほしいのか、どの状態まで症状を改善したいのか要望を伝えてください。また、現在診療所に通院されていて、大学病院を受診されたいと思う方は、かかりつけ医に紹介状を書いてもらってください。症状の改善を目指し、一緒に治療に取り組んでいきましょう」と語った。

「Rebrand Yourself vol.1」2022年5月掲載

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