患者仲間とのSNSでのやり取りをとても楽しみにしています。| わたしの乾癬物語【明日の乾癬 by UCBCares】
みんなの乾癬物語
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CHAPTER 10
乾癬に理解のあるご家族に恵まれ、精神的な負担がなかった鈴木孝好さんは、
「見えなければかまわない」と、つい治療がおろそかになってしまったと話します。
そうした日々から関節炎の発症と治療、SNSでのほかの患者さんたちとの交流まで、これまでを詳しく語ってくれました。
今から20年ほど前、30歳の頃に、額の髪の生え際にカサブタが1つだけできたんです。特に痒みもありませんでした。気になって仕方がないので、ついつい剥がしているうちに、3つに増え、徐々に頭全体に発疹が増えてしまいました。
介護施設に勤務していたので、職場の看護師に相談すると「大丈夫だと思うけれど、気になるなら病院に行ったほうがいい」と言われ、近所の皮膚科クリニックを受診しました。
特に病名は言われず、ステロイド軟膏のみが処方されました。塗れば症状がおさまるものの、塗らないとカサブタを伴う紅斑ができるという状態で、「なかなか治らないけれど、これは一体なんだろう」と思いながら過ごしていました。
2 年位経った時には、頭や顔、腕、背中、臀部、
その薬局に行ってみたところ、薬剤師なのか皮膚科医なのかはわかりませんでしたが、尋常性乾癬の写真を見せられて、乾癬という病気について詳しく説明してくれました。
処方されたのは、独自に漢方薬を調合した塗り薬。塗っていると悪化はしませんでしたね。
その後、仕事の転勤で引っ越し、近くの皮膚科に通院するようになって、そこで乾癬と診断されました。
処方されたのはステロイド軟膏。ほぼ全身に症状があり、薬を塗るのに時間がかかる上、塗ってもさほど良くはならない。結局、顔や腕とか目立つ所にだけ塗って、さぼることが増えていきました。通院する皮膚科を替えて、以前使っていたものよりも強いステロイド軟膏を出してもらいましたが、相変わらず塗ったり塗らなかったり。当然、良くもならないし、悪くもならないような、中途半端な状態が続いていましたね。
頭皮に赤い発疹や銀白色の
職場の会議でスーツを着なくてはならない時は、色の濃いものだと目立つので特に注意していました。勤務先の介護施設の制服は、夏は半袖なのですが、私はどんなに暑い日でも長袖を着ていました。これは現在でも変わりません。
先生は簡単に「毎日塗ってね」と言うけれど、頭皮にも顔にも全身にもポツポツ出ているので、それを毎日1個ずつ塗るのはとても大変なんです。妻は「背中に塗る時は言ってね」と言ってくれますが、毎日となると言いづらいです。
全身を塗るのに1回10分かかると言うと、「10分なら何とかなるだろう」とか「大したことないじゃないか」と思われるかもしれません。けれど、それを毎日、一生続けなくてはいけないと考えると、途方に暮れます。
結局、周囲から見える所には作用の強い薬を塗って、服で隠れる部分は塗ったり塗らなかったりしていました。
今から4年前、突然、手首と指関節が腫れて痛むようになったんです。痛くて痛くて文字も書けないし、車のドアを引くこともできませんでした。
乾癬で関節に症状が出るなんて知らなかったので、整形外科を受診しました。そして先生に「実は乾癬です」と伝えると、その場で調べてくれて、「これは乾癬性関節炎だから、すぐに皮膚科に行きなさい」と。
そこで通院していた皮膚科に行くと、「うちのような小さい所では対応ができない。すぐに大学病院に行きなさい」と言われて紹介状をもらいました。
先生に、「頭や顔も全身にも症状が出て痒いし、とにかくつらい」と訴えた結果、生物学的製剤の投与を月1回受けることになりました。
そして初めて点滴したら、関節の痛みも消え、肌もきれいになったのですが、ものすごく具合が悪くなってしまいました。そこで、先生の判断でその薬は中止し、別の生物学的製剤に替えました。
すると、今度はその生物学的製剤によってアトピー性皮膚炎様の皮疹が出現しました。おそらく生物学的製剤で皮膚バリア機能が低下したためにアトピー性皮膚炎様の皮疹が誘発されたのではないか、ということでした。希少なケースだったようで、先生が学会で発表されています。
乾癬の皮膚症状はこの薬で改善し、手も爪もきれいになりました。指の関節炎は残っていて、痛くはないものの見た目に変形がわかるので、人前で素手を出すのは控えるようにしています。
頭と顔の皮疹が出ているところにはステロイド軟膏を、週に1回は塗っています。
今の職場の上司と同僚には、乾癬であること、生物学的製剤を使用していることを伝えてあります。でも、以前の職場では誰にも伝えませんでした。
そもそも乾癬という病気が知られていませんから、全く知らない病気を説明するのも難しく、「うつる・うつらない」という話で終始しがちです。理髪店に行く時、あるいは誰かに仕方なく説明する時も、「皮膚の病気だけど、うつらないので安心してください」としか言えませんでした。これは現在でも変わっていません。
やはり生物学的製剤の経済的負担です。高額療養費制度を使っても1ヵ月およそ4万5000円かかっています。私のところは夫婦2人暮らしで子どもがいないとはいえ、やはり負担は大きいです。
この負担をいつまで続けなくてはいけないのかと不安になります。既に4年ほど続けているので、生物学的製剤のために働いているような感じがして、何とも言えない気持ちになります。私には合っているようなので、生物学的製剤をやめるという選択は考えられません。それだけに「乾癬性関節炎も指定難病だったら」とか「生物学的製剤がもっと安価になったら」と、どうしても考えてしまいますね。
東京の患者会に入っています。主治医の先生から初めて「患者会」という存在を聞いた時、きっと「傷をなめあう場所で、暗い雰囲気なんだろうな。入っても意味なんかないだろう」と思っていました。
2020年、Twitterで「患者会のZoom飲み会がある」と知り、会員でなくても参加できるというので覗いてみることにしたんです。そうしたら、みんな乾癬なのに明るいし、楽しくワイワイやっていたので、イメージがガラッと変わって、「こんなに楽しいなら」と参加しました。
たとえば、東京の患者会はLINE のオープンチャットがあるのですが、「診察時間は3 分までと決まっている」とか「先生に質問しても、そんなことに答える時間はありませんと言われた」といった書き込みもあります。それを読んで、私の先生は話を聞いてくれるし、質問すれば答えてくれるし、良い先生なんだなと再認識できました(笑)。
私自身は、主にTwitter を使っています。自己紹介には「僕は乾癬なので、情報交換がしたい」と書いてあります。
フォロワーは約180人で、フォローしている人は150人位です。“世界乾癬デー”についてツイートした時は、「いいね」がたくさんつきました。こうしたやりとりは、治療のモチベーションにつながっています。
はい。「関節の痛みをとるために生物学的製剤を始めた」とTwitterに投稿すると、「僕も始めようと思っているけれど、高額療養費制度を使って実際のところ、いくらかかりますか」という質問がきました。また、「生物学的製剤の自己注射をしていて、打つ時の痛みがすごいんだけど」と患者会のZoom 飲み会で話したら、「保冷剤で患部を冷やしてから打つと痛くないよ」と患者会の理事長の方が教えてくれました。その通りにしたら、本当に痛みがなくなって助かりました。
もちろん治療については、「最終的には主治医に聞いてね」という答えになりますが、そこに行き着くまで悩みを聞いてくれるだけでも助かります。仮に答えが出なくても、自分の考えを整理できたり、見通しがついたりします。1人で悩み続けなくて良いのは、とてもありがたいと思います。
入会したのがコロナ禍になってからなので、まだTwitterやZoomで話しているだけです。対面式のイベントが開かれるようになったら、ぜひ直接みなさんと話したいですね。
患者会のSNS なら、会員でなくても、遠い地域からでも参加できます。もし、まだ一度も患者会に参加したことがない人がいたら、まずはSNSから参加してみると良いのではと思います。
「Rebrand Yourself vol.4」2022年11月掲載
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